行っていない山を、拝んだことになった
出羽三山は「生まれかわりの旅」と呼ばれる。羽黒山が現世、月山が前世、湯殿山が未来にあたるとされ、三つを順に歩いて生まれ変わる、という筋書きになっている。
わたしは羽黒山にしか行っていない。
それでも、三山を拝んだことになるらしい。羽黒山の山頂にある三神合祭殿には、月山・羽黒山・湯殿山の三神が祀られている。冬は月山と湯殿山に雪で登れないので、羽黒山に三神を祀ったと伝えられていて、11月以降はここが三山で唯一参拝できる場所になる、と山形県の観光サイトには書かれている。社殿は文政元年(1818年)の再建で、茅葺きの屋根は厚さ2.1メートルあるという。
そして2026年は、羽黒山の午年御縁年にあたる。12年に一度で、この年に参拝すると12年分のご利益があるといわれている、とのことだった。
8月29日
神橋を渡って、五重塔を見て、山頂で御祈祷を受けた。
御祈祷では、わたしが代表になった。理由はよく分からない。ただ、名を呼ばれて前に出たとき、素直にうれしかった。12年に一度の年に、たまたま来て、たまたま代表になっている。そういう日だった。
御祈祷料は2万円だった。12年に一度の年に払って、12年分のご利益ということになっている。1年あたり1,666円。安いのか高いのかは、12年経たないと分からない。
祈祷のあいだ、外はきれいな大雨だった。音が屋根から降ってくる感じで、祝詞と雨の区別がだんだんつかなくなる。
終わって外に出たら、止んでいた。
因果を主張する気はない。雨は勝手に降って勝手に止む。ただ、事実として、そういう順番だった。
帰り道、神橋のあたりで、石段が動いて見えた。
にゅろにゅろ、という感じで、段の線が波打っていた。雨上がりの濡れた石と、杉の間から落ちる光と、こちらの足の疲れ。それで説明はつく。つくのだが、見えたものは見えたので、そのまま書いておく。
羊羹がうまかった。これは説明がつく。値段は忘れた。うまかったことだけ覚えている。
今はこうなっている
湯殿山には行っていない。月山にも登っていない。 それでも、三山を拝んだことにはなっている。
制度としてそう決まっているからで、ずるをしたわけではない。ただ、「行っていない場所を拝んだことになる」という状態が、参拝してから何日か経っても、まだ少し不思議なままだ。
未来(湯殿山)だけ、まだ行っていない。それはそれで、順番として正しい気もする。
値札
- 御祈祷料:20,000円(12年に一度の年。1年あたり1,666円ということになる)
- 駐車場:無料
- 山頂へ上がる道:400円
- 秋田市から:片道およそ2時間半
- 羊羹:忘れた
出典(いずれも2026-09-04閲覧)
- 出羽三山 参拝ガイド/山形県公式観光サイト
- 出羽三山神社 羽黒山三神合祭殿【令和8年 羽黒山午年御縁年】/やまがたへの旅